「灰色の北壁」(小説現代2004年8月号/真保裕一)

真保裕一が、またやってくれた。「黒部の羆」に続く山小説の登場。
小説家を主人公とし、ヒマラヤの架空の山をめぐるノンフィクションと、現在を織り交ぜて描く手法は見事。山岳ミステリでまだこんなやり方があったんだ、と驚かされた。殺人事件を持ち出さなくても、ミステリ的要素を山で用いることが出来るのを証明した。
黒部〜、灰色〜、そしてまた別の山小説を追加して短篇集が編まれた時、日本の山岳小説界に新たな1ページが刻まれることになるのは間違いない。