「葛城天狗」(SFマガジン2005年2月号/谷甲州)

新連作シリーズ《霊峰の門》の第一話。
壬申の乱が終わった奈良時代葛城山が舞台。
山岳ミステリとか山岳幻想小説とかあるけれど、これは「山岳伝奇」というジャンルらしい。
役小角、言霊、壬申の乱、尸者……。話としては魅力的で面白いのだけれど、「山岳」色より「伝奇」色の方が強く、ほぼ全編が山の中で展開されるわりに、登山や登攀の描写そのものはそれほどなく、山小説読みとしては残念。
同書のインタビューによると、「天を越える旅人」の日本版と言える作品で、輪廻転生がテーマになるようです。この「葛城天狗」の話は完結していますが、登場人物が生まれ変わり、全部で七話か八話程度の連作となる予定とか。各話の共通項目として「霊峰」が出てくる「山岳伝奇」シリーズですので、今後の展開に注目したいです。
次回第二話は「悪党左衛門尉」で、春頃の予定。第三話は「熊野忍び衆」。
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