「不屈者」(新潮社/後藤正治)

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不屈者

『絶望からカムバックした五人の「達人」の魂を描く人物ノンフィクションの最高峰!!』ということで、森安敏明(元プロ野球選手)、村田亙ラガーマン)、谷川浩司棋士)、井村雅代(シンクロ・コーチ)と並んで、山野井泰史が取りあげられています。
初出は、『アエラ』2001年9月17日号。
ギャチュンカンの前です。
初出誌は読んでいないのですが、ギャチュンカン以降が描かれていたり、『垂直の記憶』(2004年)からの引用も多いので、おそらくかなり加筆されているのでしょう(ただ、ポタラ峰登頂成功については、書かれていない)。
ギャチュンカンをメインに据えていないあたり、今読むと、逆に新鮮に感じます。
周囲の人からのインタビューを多用していたり、ギャチュンカン以前に文章の多くが費やされているので、『凍』とは違った山野井泰史像が見えてくるような感じがします。
山岳描写には、えっと思わされるところもありますが、短いながらも、彼の凄さが伝わってくるノンフィクションだと思います。
山野井の言葉をひとつ引用。

死ぬことを怖れない人間ではもちろんない。ただ、どこかで自分の死というものを組み込んで生きてきた点はありますよね。死ぬことを回避するために登山をやめることは死んでも嫌だといいますか、究極、目標の登山ができたら、そこで死んでもまあいいかと思ってきたところはある……

「山野井通信」によると、
『来年は人前で話しをする事を止め登りに集中しようと思っています』
とのことです。
講演会を聴けないのは残念ですが、常に新たな目標に向かい続ける姿には感服いたします。


山野井通信