「山は真剣勝負」(東京新聞出版局/山田哲哉)

【bk1】/【amazon】
山は真剣勝負

 「歩けなくっちゃ、話にならないんだよ!」。年間100日以上の登山を16年間続けた著者が体験を重ね合わせながら語る辛口の登山原論。登山技術、装備、遭難、山岳会論、山の常識、環境問題とテーマは多岐にわたる。漫然と登ってきた人には心にグサリとくる。登山を始めたばかりの人には大きな指針になる。山の専門誌「岳人」連載の単行本化。

東京新聞出版局


「辛口」と書かれているが、言っていることは、ごく当たり前のことだと思う。しかし、その当たり前=常識が、もはや通用しなくなってきているようだ。
・山を歩かない(登らない、登るのを嫌う)クライマー。
・地図を読まない(読めない)、天気図を書かない(書けない)登山者。
・一緒に登っているのに、内実はバラバラのパーティ登山。
……など。
身に覚えのある話もあるし、現状はそこまで来ているのか、と驚かされる話もある。
登山、クライミングの多様化はもはや後戻りできないところまで来ている。「プラスチック・クライマー」に雪山登山をやれ、と言ったって、無理な話だ。
私は、岩登りでもアイスクライミングでも、できれば稜線に抜けるようなルートが好きで、抜けた後が頂上だったりすると最高だと感じている。ラッセルやヤブこぎなんかの泥臭く、昔ながらの山登りも楽しむことができる。ゆえに、著者の意見には納得させられる部分が多い。

あとがきに「ぼく自身はオーソドックスだと信じているが、時代の主流からは大きくはずれてしまった」とある。それがとても寂しいことだと思える。
あらためて、山の本来の楽しみ方とは何か、山の接し方をどのようにしていくか、というものを考え直させるきっかけとなった。