「K」(双葉社/画:谷口ジロー 作:遠藤史郎)

K(ケイ)
 1993年
 ネパールでポーターを営む謎の日本人K(ケイ)に関する5つの物語。
 谷口ジローの緻密な絵で描かれる山の姿は、その寒さもその恐ろしさも痛いほどに伝わってくる。汗の一粒一粒で、その緊張感がこちらにも感じられる。
 エベレストの南西壁バットレスを風の力で逆立ちしながら進むなどという「いくらなんでもそれは無理だろう」という話もあるが、彼の絵で見ると何だかリアリティが感じられるから不思議である。
 私のお気に入りは、第3章の「エベレスト」。話自体は荒唐無稽に感じられるが、Kの人間らしさが一番現れた傑作だと思う。