「山靴よ疾走(はし)れ(全5巻)」(集英社/紅林直)

山靴よ疾走れ 1 (1)
1999年〜2001年
 2000年7月まで週刊ヤングジャンプに連載され、その後増刊号などで話が続いた。
 「北アルプス警備隊」という架空の山岳救助隊を舞台にした物語。剱岳の単独登山中に遭難してしまった医大生・鹿賀晶が、新人女性警備隊員・嘉門ハルカに救助されることから物語は始まる。三年後、晶も警備隊の隊員になり、さまざまな事件を通じて、ハルカとともに成長していく様が描かれる。
 クライマーではなく、救助する側の話ではあるが、そこには「登頂なきアルピニスト」の「正真正銘のアルピニズム」の姿がある。良い意味での誇張はあるが、基本的にリアリティのある物語なのが好感が持てる。物語の展開もスピーディだし、感動的である。主人公の過去の物語等も語られ、奥が深い。
 個人的には、美樹さんに泣かされました。
 こう言う話なら、山を知らない人でも十分楽しめると思う。下界だとしらけてしまうような熱い男(女)の心意気も、山で語られると無理がないように感じられる。
 エベレスト編は、展開にかなり無理があるような気がしたが(ハルカさん、高度順化なしにそんなところで走ったら死んでしまうよ)、話としては面白かったので、満足。増刊号での単発ものの話も一つ一つドラマティックで良かったけれど、やっぱり長い話のほうが、読み応えがあってさらに良い。
 いくらでも話は作れそうなのだが、唐突に終わってしまったのが残念。