「ホワイトアウト(全3巻)」(講談社/原作:真保裕一 漫画:飛永宏之)

ホワイトアウト (上)
2000年
 基本的には小説に忠実な漫画化ではあるが、細部で小説とはまた違ったアレンジがなされている。漫画ならでは、の飛躍的な「ウソ」もあり、物語を盛り上げる上では効果的となっている。太白ダムへの侵入シーンなど、小説はもちろん、映画でも表現できないだろうと思う。
 ラストシーンもオリジナルで、(話としてかなり強引だと思うが)ドキドキさせる展開となっている。でも、いかんせん絵がちょっと・・・。上手い下手はともかくとして、少なくとも私好みではない。やりたいことは分かるんだけど、何か迫力に欠ける部分が目に付く。致命的なのは、この物語の影の主役とも言える「雪」の描写が甘いこと。寒さも厳しさもイマイチ伝わってこない。作者にとっては、これがデビュー作のようなので、その辺は大目に見なくてはならないのだろうか。全体的には、見るべきところもあるが、今一歩パンチ力が足りず、損をしている作品。山岳色も非常に低く押さえられている