「ゴルゴ13シリーズ 『白龍昇り立つ』」(小学館/さいとう・たかを)

ゴルゴ13 (119)
1996年6月(雑誌掲載)
 パンチェン・ラマの生まれ変わりとしてチベットに住むラモンを収容所から救い出す、という依頼を受けたゴルゴ13。転生祭の混乱に乗じて逃げ出したラモンとともに、チョモランマ・サウスコルを越える山岳ルートでの脱出を図るが、そこは7000mを超える死の地帯であった。
 チョモランマでの、ゴルゴ(ラモン)と、それを追う中国山岳部隊の追跡劇である。山岳色は濃く、山漫画としても非常によくできている。物語の展開としても、チョモランマという設定をうまく生かしており、読み応えがある。
 ただ、セリフが大変説明的なのが気になる。「むだだ。表層雪崩は時速二〇〇キロで、爆弾並みの破壊力だ。・・・一瞬で窒息死か、埋まればマイナス三〇℃で、五分で死ぬ。生存の可能性はない。」など、勉強になるなあと思うし、資料をよく調べていると思う。でもやっぱり会話としては不自然だと思う。その分野に疎い人間でも理解しやすいという利点はあるのだろうが。
 ゴルゴ13の他の作品を読んでいる訳ではないので、シリーズ内の位置付け等はわからないが、なかなか面白い作品だと思った。