「目で見る日本登山史」(山と溪谷社)

(その1)
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目で見る日本登山史
内容はあまりにも膨大かつ多岐にわたるため、一言ではとても説明しきれません。
とりあえず、ファーストインプレッションと概要を。


山と溪谷社創立75年記念出版。
「目で見る日本登山史」と別巻「日本登山史年表」の二分冊。


本体の「目で見る日本登山史」は、貴重な写真や資料を含む膨大なビジュアルで見せてくる、全く新しい登山史。「登山史」というと堅苦しいイメージがあるが、写真を見ているだけでも充分楽しく、数多くの発見がある。単に当時のウェア(着物)やギア(道具)を知ることができる、というだけでも、ひとつひとつに新鮮な驚きを感じられる。


内容は、時代ごとに4部に分かれており、
第1部 近代登山前史(江戸後期、山の調査など)
第2部 探検の時代(日本山岳会設立、山案内人群像など)
第3部 岩と雪の時代(大正登山ブーム、バリエーション・ルート、谷川岳の開拓など)
第4部 先鋭と大衆の時代(RCCII、マナスル登頂、ヒマラヤ・ラッシュなど)
となっている。


別巻「日本登山史年表」は圧巻の一言。一目見て圧倒される。
著者・編者の苦労が思い知らされ、めまいがしてくる。あまりにもすごくて涙さえ出そうになる。それほどまでに圧倒的な情報量で、この別巻が本体と言ってもいいくらいに思える。
読み始めたら止まらないが、読み込むのにいったいどれだけの時間がかかることか。


最初が675年の役小角、最新は2005年4月の真達朋子(日本人女性初5.14)。
日本人による海外登山史年表もあって、こちらは、1867年の日本人初のアルプス登山から2005年山野井泰史ポタラ峰北壁まで。


こんな本はあと十年、二十年(いや、もう二度と?)は出ないだろう。
立ち読みしたり、図書館で借りて読む本ではない。
手元に置いて、大切に読みたい本。
8190円という値段に、ちょっと引いてしまうかもしれないが、中身を見れば、むしろ安いくらいに感じる。10年の歳月をかけた、と言ううたい文句はダテではない。それほどの年月をかけなければ、これは完成しなかっただろう。
登山史に興味があろうがなかろうが、一読(というか一見)の価値はある。
大型書店にしか置いていないかもしれないけれど、ともかく、立ち読みでもいいから中身を見てほしい。
パラパラ見るだけでもそのすごさは充分伝わる。
そして、読めば読むほど、味わいが増し、山登りの持つ歴史の深みにどっぷりとはまってしまうだろう。で、そのうちにこの本の虜となり、手放せなくなるに違いない。
(つづく)
山と溪谷社