「オンサイト!(2)」(講談社/尾瀬あきら)

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オンサイト! 2 (2)

ジャパンカップを観戦して、刺激を受ける麻耶。
サッカーに集中するため、クライミングを離れる舜。
そして、初めてのコンペ出場とライバル坂上薫の登場。
ゆっくりと、しかし着実に物語は動き始めた。


読んでいると、登りたい気分になってくる。
それは単純だけど、とても重要なこと。
フィクションであれノンフィクションであれ、読み手のパッションを呼び起こさせる力を持っているというのは、すごいことだと思う。
残念ながら、そこまでの力を持つ物語というのは、それほど多くはない。
とくに小説や漫画といったフィクションは、作りものであるがゆえに、話を客観的に見てしまい、(ストーリーにのめり込むことはあるにせよ)自分がどうこうしよう、という気にさせるものは少ない。
「オンサイト!」は、その力を持っている。


力の源のひとつは、クライミングシーンのコマの一個一個が、表情をうまく捉えている点にあると思う。コマ割りやアングルなどの見せ方が、うますぎるのだ。
墜ちる瞬間の時間が止まったような感覚。必死でホールドを探す眼。登り切ったときの達成感。リン・ヒルと平山裕示の登り方の対比も素晴らしい。
こういうのは、文章でも映像でも写真でもない、漫画だからこそできる表現方法だと思う。フリークライミングを正面から扱った漫画が、いままでなかっただけに、著者の実力を見せつけられるように感じた。


第12話の墜ちるシーンと、同じルートを登り切るシーン。第15話のお父さんのビレイで登るシーンなどが印象に残るが、やはり最も素晴らしいのは、第16話、17話のコンペシーンだろう。読んでいて、文字通り、手に汗握る感覚を味わった。麻耶が登っているときに舜の手元を合間に入れてくる見せ方とか、最後のホールドを取る瞬間など、緊張感がじりじりと伝わってくる。


これで第一部完、となるが、第二部が必ずあるだろうと、期待して、確信して、熱望している。


「たちはだかるすべての壁を登れ!!」
このセリフが素敵。


オンサイト!(1)の感想

オンサイト! 1 (1)