「イカロスの山」(週刊モーニング/塀内夏子)

ダウラギリ南壁の登攀を成功させた平岡と三上。
それから8年後。三上は結婚し山から離れており、平岡は山は続けていたが交通事故で入院していた。
そんななか、衝撃のニュースが飛び込んできた。
ヒマラヤに8006mの未踏峰が発見されたというのだ!


「15座目の8000m未踏峰が存在していた!」というのは、設定としては面白いが、いまさら初登頂争いでもなかろうに、という気もしてしまう。
登山史的にいえば、1950年-60年代で、初登頂を求める、いわゆる「黄金時代」は終わっているのだ。現在では、バリエーションを求める「銀の時代」、より困難な岩壁を求める「鉄の時代」もほぼ終わりを告げた。
確かに「未踏の8000m」は、一般的には判りやすくていいのかもしれない。この期に及んで、「世界最高峰エベレストを目指す!」とは、さすがに恥ずかしくて言えないだろうし。
8000mという基準にどれほど意味があるのかは疑問だが、今まで発見されていなかったというその山に、標高以外の魅力があるなら問題は別だ。山の形が美しいとか、困難かつ合理的な登攀ラインが引けるとか。
8000mを「征服」する、という名誉のみを主人公たちが求める話にならないといいのだが、と淡い期待を寄せてみる。


2005年の現代を舞台にしてはいるが、古き良き時代の話、としてノスタルジーを感じながら楽しむのが良さそう。


冒頭の登攀シーンから、突っ込みどころは多々あるが、難しいことを考えずに、勢いと雰囲気に身を任せてしまうのが、この物語を楽しむ正しい姿勢なのではではないかと思う。
ライミングコミックの新時代を切り拓いた「オンサイト!」のあとに、時代に逆行する「イカロスの山」というのもまた面白い。


ともかく、1話だけで結論づけてしまうことはない。この先の展開を温かい眼で見守ることにしよう。
e-モーニング
塀内夏子オフィシャルWebsite「なつこの部屋」