「イカロスの山(第5巻)」(講談社/塀内夏子)

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イカロスの山 5 (5)

よくもまあこれだけ次から次へとトラブルが起こるものだ。
週刊連載で、話を盛り上げていくには、こうするしかないのか。
それにしても、これだけ動き回って、この高所で平然としているのがまたすごいことだ。

「登山は結果がすべてじゃないぞ」
「『栄光』でも『挑戦』でもなければ 『ビジネス』であるはずもない」
「まして『征服』という言葉であらわせられるものでも 断じてない!」
「おれが山に登るのは」
……
「結果がすべてだと?」
「ならば魂は」
「魂はどこへ行くんだ」

このあたりのくだりはよかった。
だからこそ、その前段階の靖子がどうしたこうしたは、よけいに不要に感じる。


さて、いちおうつっこみを入れておきましょう。
・ハーネスのギアラックにカラビナとアイススクリューしかないのはなぜでしょう。
・でも、中間支点ではスリングを使っています。肩からかけているわけではなさそうです。どこから出てきましたか。
・アブミの最下段のひもがひらひら舞っています。一番下にはプレートを着けないのでしょうか。だったら切った方がいいです。(これはザックのストラップも同じなので、演出上の問題-風の表現-でしょうけど)
・p16。ハーケンを打って足場にしていますが、これはいったいなんでしょうか。そのすぐうえに別の支点が取ってあります。アブミも持っています。なぜアブミを使わず、ハーケンでA0するのでしょう。意味不明です。
・どこぞからエイト環を出して懸垂下降を始めました。それはいいのですが、このエイト環セットの仕方(p59付近)では、ロープが絡まって降りられません。
・その下降で、平岡がザックを背負って下る意味はありますか。救助に向かうなら、なるべく荷物は置いていきましょう。で、三上のザックを背負ってやるくらいのことをしてあげたらどうでしょうか。
・今回最大の問題は、p67付近のアイススクリュー(文中ではハーケン)の使い方。こんな中途半端な刺さり具合のスクリューを、しかも1本だけで確保支点にして、環付きでもないカラビナ(ページごとにカラビナの形が変わるのはなぜ?)で、ビレイしてたら、怖くて仕方がありません。
・荷揚げの量がやたらに多いです。ロープも明らかに50m以上ありそうだし、(箱だけかもしれないけど)カレーが段ボール一箱分あります。どうやら、これをぜんぶ持って登っているらしいです。おそろしい。
キリがないのでこのあたりで。
「岳」はこういうところを気にすることなく、話にのめり込めるからいいなあ、とあらためて思います。


追記
連載は、いよいよラスト間近でしょうか。
個人的には、このままあと2-3回ですっきり終わって欲しいですが、
そう簡単に下山させてくれるとは思えないし、
下山しても、そのあとに昼ドラ展開が待っているかもしれない、と思うと憂鬱です。
でも、さすがにクライマックスだけあって、ここ数回はなかなか盛り上がっていました。