「こちら愛!応答せよ(全7巻)」(講談社/上原きみこ)

こちら愛!応答せよ (3)
 高校山岳部の小林愛が織り成す、愛と青春と山の「きらめきの青春グラフィティー」。
 いわゆる少女漫画で、目がキラキラ輝いているし、突然背景に花が出てきたりして、慣れない最初は読むのが結構つらかった。それに、出だしが極甘ラブストーリーで、読んでいるこっちが恥ずかしくなってきてしまった。
 しかし、愛が徐々に山にのめり込みだす2巻以降、俄然面白くなってくる。恋愛とクライミングをうまく組み合わせたストーリー展開は、なかなか読ませる。
 山用語やクライミングの描写も正確で、納得できる部分も多い。「岩かげから/ひょこんと/パートナーが顔を出す/この瞬間が好き!」なんて、山を知らなきゃ言えないよな、と思う。何より、主人公愛の「山が好き」「クライミングが好き」という気持ちが、うまく表現されていて、こちらに伝わってくるのがよい。
 ラストをエベレストではなく、(わりとマイナーな)K2にもってくるというのも憎い。さらにそれを松濤明で締めくくるというのがまた渋い。
 絶版だけど、古本屋を駆け巡って探すだけの価値はある。
 (後日知ったのだが、著者の上原氏は、趣味で登山をするそうだ。納得である。人づての話では、ここまで描けないと思った。)
 (さらに、余談だが、84年〜87年まで、「こちら愛…」「蒼き氷河…」「おれたちの頂」と女性の描く山漫画が多い。女性登山ブームだったのだろうか?)